台湾鉄道が「名物列車の置き換え」を急いだ事情 課題の「民営化」へ車種整理でシンプル化図る

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引退を前に数少なくなった運用をこなすEMU1200型電車(写真:台湾鉄道提供)
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3月28日、台湾鉄道(台鉄)は2021年末から運行を開始した日立製新型特急電車EMU3000型の増備に合わせ、ダイヤ改正を実施した。そして、この改正を機に2つの列車が引退を迎えた。1つは水色の鮮やかな塗装とダークグリーンの座席が特徴の客車列車で、近年は花蓮や台東を結ぶ東部幹線を走っていた「復興号」。もう1つは中南部を中心に活躍し、ボーダー柄のインパクトの強い様相から「赤いシマウマ」の名で親しまれたEMU1200型電車だ。

これらの引退に合わせ、台鉄は乗車証明書の配布や引退記念ヘッドマークの取り付け、記念乗車券販売などのプロモーションを実施。とくに、台北駅と花蓮駅で各150セット限定だった復興号の記念乗車券は徹夜での行列ができるほどの人気で、民衆からの関心の高さがうかがえた。

20年越しの課題「民営化」

国営である台鉄は近年の度重なる事故やトラブルを受け、民営化に向けた取り組みを加速させている。乗客18人が死亡した2018年10月の「プユマ号」脱線事故を受け、政府は「台鉄総体検」と称した大規模監査を実施。その最中の昨年4月、「タロコ号」が工事用のトラックと衝突して脱線、49人が死亡する事故が発生、保線管理の杜撰さが表面化し「台鉄改革」が叫ばれることとなった。これは安全性の向上はもちろんのこと、労働環境に起因する人手不足の改善のみならず、車両の運用や観光戦略の見直しなど多岐にわたる。

水色の車体が鮮やかな復興号客車=花蓮駅にて(筆者撮影)

今回の改正も抜本的な変更とはならなかったものの、台鉄は1つの新しいマイルストーンと表現した。

郵便局やエネルギー各社が民営化を達成した中、台鉄の民営化は20年叫ばれ続けている国政の課題でもある。台鉄は今後どのように変わっていくのか、この改正で引退した優等列車の歴史を振り返りながら、今後の展開に迫っていきたい。

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