「幸せを感じられる人」「不安にとらわれる人」の差 成功だけを人生の目的にすることの大問題

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日々幸福を感じられる人はどんな人か(写真:zak/PIXTA)
私たちが生きている中で、「成功」はどちらかというとポジティブなイメージで受け止められています。しかし、成功を人生の目的やゴールにした場合、私たちはたちまちもろい存在となる可能性があります。本稿では哲学者の岸見一郎氏による『絶望から希望へ』より、とある哲学ゼミで繰り広げられる、悩める若者と哲学者の対話を通し、成功だけにとらわれることの危険性と、真の幸福について考えます。

「今ここ」における幸福を見逃さない

登場人物
岸見一郎
(以下――――)
A 哲学を専攻する大学3年生。就職活動中だが、親の希望する就職先と、自分の生きたい人生にズレがあり悩んでいる。
B 社会人3年目。未来に悲感的。営業の仕事をしているが、ノルマ優先の働き方に悩んでいる。婚約していた相手と破局し、男性不信になっている。
C 社会人5年目。夢を叶え、マスコミ関係の仕事をしているが、パワハラ上司に悩んでいる。ネガティブになりがちな自分を克服したいと思っている。成功して自信を持ちたい。

――成功を目指す多くの人は、今ではなくて未来のことを考えます。成功するために、勉強や仕事に打ち込み、今とにかく頑張る。成功というのは、そういう意味では、今ではなくて先のことです。しかし、未来に成功するかどうかはわからない。

小さい時から将来のことを考えて、一生懸命勉強してきたわけでしょう? 大人たちは輝かしい未来のためだと子どもたちに吹き込んで、今は我慢しよう、楽しむことを控えて努力しろといいます。子どもたちは今を犠牲にして生きてきたのに、大学に入ったら、ウイルスの蔓延で大学そのものが開かれていなかったということが起こるのが現実です。

ですから、そこに至るまでの十数年間、将来のことばかり考えている間に、もっとその時々を楽しまなければいけなかったと気づいている人がいると思うのです。いつでも「今ここ」を楽しむことに専念しないといけないと思っています。どうですか?

A:その通りだと思います。でも、ずっと、幸せには条件があると思わされてきました。小さい頃は、ピアノのコンクールで優勝したら幸せになれる、それをクリアしたら幸せになれると思っていました。

――でも、優勝できないかもしれないですね。その条件をクリアできないかもしれない。そうなった時にどうするかという問題があります。

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