【産業天気図・保険業】生保、損保ともに盛り上がり欠く展開続く
生命保険、損害保険ともに全般に売り上げ面では力強さに欠ける「曇り」模様の天気が当面続きそうだ。
まず生保。9月中間期も国内大手・中堅生保9社の新規契約高、保有契約高はマイナスとなった。少子高齢化等を背景に主力の死亡保障保険が構造的縮小基調にある。銀行窓販での変額年金や医療保険等の第3分野保険は市場が拡大、外資系や損保系生保の上位勢がこの流れに乗って成長する一方で、国内系生保はいまだ市場ニーズの変化にうまく対応し切れていない。予定利率引き下げ法案のあった前上期に膨らんだ解約失効が沈静化し、支払保険金等が減少したため、保険本業の収支は改善基調にあるが、全体としては市場漸減基調から当面脱却するのは困難。死亡保障から生存保障(年金や医療保険)へのシフトに乗れる生保と、それ以外の生保との勝ち組・負け組の二極分化が、今後さらにはっきりしてくるだろう。
続いて損保。今期の特徴は台風等の自然災害頻発による保険金支払いが急増したこと。上期は大幅収益減額となった。通期は異常危険準備金の取り崩しで収益低下は一定範囲に止まるが、内部留保が薄くなるマイナスの影響は不可避。保険会社にとってさらに頭の痛い問題は、トップラインの正味収入保険料が漸減基調にあること。半分を占める主力の自動車保険に代表されるように、販売件数は前期並みを確保しても競争や等級進行からくる構造的単価下落圧力があり、売り上げ面でマイナスが続いている。単価下落は利益面でマイナスに響く。人件費や物件費など、2、3年前の合併を機に合理化効果を実現してきたが、この面での合理化余地も時が経つに連れ、徐々に小さくなってくるのは必至。前期、今期と持ち合い株売却に伴う高水準の有価証券売却益が収益底上げをもたらしているが、保険引受に伴う本業収益は必ずしも厚いとは言えないのが実情だ。来期もトップラインの回復は期待薄。自然災害が平常レベルとなる前提で、損害保険金減少が多少プラスになるにしても、有証売却益の減少幅次第では収益続落となる会社も出てくるだろう。
国内市場に大半を依拠する各社にあって、注目はミレアホールディングスと三井住友海上の2強。ミレアは傘下の東京海上日動が今年10月の合併から1年経つ来期半ば以降に合理化と営業強化の効果が徐々に発現していくだろう。三井住友は買収した英国AVIVA社のアジアオペレーションが収益に本格寄与する。両社ともに国内生保、アジア事業など次なる収益源の強化にも積極的なだけに、M&Aも含め将来収益成長力の確保面でどういう新材料が出てくるかが最大の期待材料といえる。
【大西富士夫記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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