今般の鉄運機構に対する融資は、リニア中央新幹線の全線開業を最大8年間前倒しするために約3兆円融資して以来の大型案件である。
なお、財政投融資計画そのものは、国会の議決対象ではないが、その計画を実施する主体である財政投融資特別会計の予算案は、国会の議決対象であり、一般会計やほかの特別会計などと一体で3月22日に2022年度予算として成立したところである。
こうして建設費の資金調達を財政投融資が後押ししたこともあって、路線延伸が許可されたといえよう。
今般の建設費の一部に充てられる資金は、財投債という形で国債を発行して賄われることとなる。これは、一般会計で建設国債を発行するのとは、似て非なるものである。
借金の償還財源は運賃であり、税金ではない
建設国債は、確かにインフラ整備に資金が使われるが、その返済原資は、建設されたインフラの恩恵を受けたか否かにかかわらず、国民から徴収された税金で賄われる。しかし、財投債は、融資を受けた組織・会社が得た事業収入をその返済原資に充てる。今般の融資は、開業した暁に地下鉄の乗客が払う運賃などが、財投債の償還財源となる。基本的に税金の投入は想定していない。まさに、財投債は増税を必要とせず、応益負担の原則が徹底できるのである。
もちろん、財政投融資計画を所管する財務省は、鉄運機構、さらには東京メトロの事業計画をにらんで、償還確実性を精査したうえで、融資を計上したところである。
それと、東京メトロの延伸許可が下りた同じ3月28日、関連してもう1つ重要な答申が出された。それは、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会から「東京地下鉄株式会社の株式の処分について」と題した答申である。ここで、国と東京都が保有している東京メトロ株式を、上場に向けて今後どのように売却するかの方針を打ち出した。
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