京急の得意技「駅名もじり」これまでと違う新展開 東洋水産とコラボ、私鉄・食品会社の意外な相性

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京急は3月7日のニュースリリースで、キャンペーンの目的を「東洋水産が、冷凍鮪輸出を生業に創業したほか、本社が品川駅近くにあるなど、まぐろで有名な三浦半島と品川を結ぶ京急電鉄と親和性が高いことから実現したコラボレーションで、『食品×交通×流通』の各方面から沿線を面(麺)でジャックすることで、沿線地域の更なる活性化を図る」と説明している。

天空橋駅を発車するラッピングトレイン(記者撮影)

東洋水産の本社所在地は「東京都港区港南」で、京急がシナガワグース(旧ホテルパシフィック東京)跡地を再開発する、品川駅高輪口(西口)の反対の港南口側にある。

もとは1953年、築地市場で「横須賀水産」として創業した。「マルちゃん」マークは1962年、即席麺市場への本格参入にあたって「美味しさや楽しさ、幸せをお届けしたい」との願いを込め誕生したといい、1986年に現在のデザインとなった。

東洋水産も「手応え」

1978年に登場した「赤いきつねうどん」は当初「熱いきつねうどん」のネーミングで発売予定だったという。その2年後に「緑のたぬき天そば」がデビューした。武田鉄矢さんが赤いきつねの発売当初からCMに登場し「同じ俳優を起用したTVCMを、最も長い間放映し続けている商品」としてギネス世界記録に認定されたことがある。

QTTA戦略担当常務の香川照之さんをデザインした品川駅の広告と京急グループの担当者たち(記者撮影)

こうしたロングセラー商品と比較すると5周年のQTTAは成長の余地が大きい。

東洋水産CSR広報部の担当者は「MARUCHAN QTTAが発売してから5周年を迎えるため、対象アイテムに選びました。今回のキャンペーンを通して、手応えを感じており、商品の実績も好調に推移しています」とコメントした。

大手私鉄の多くはグループ内にスーパーマーケットなどの流通事業を持っている。新型コロナウイルスの感染拡大局面では、移動需要の減少で苦戦する鉄道に対し、巣ごもり消費を追い風にした流通の健闘が目立った。スーパーは食品を中心に幅広い分野のメーカーとのつながりがある。グループ内の連携強化で、駅や車両を活用したキャンペーン展開の可能性が広がりそうだ。

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今回の京急のコラボ企画はこれまでに培った「駅名もじり」のノウハウを生かして、鉄道の広告収入だけでなくグループの流通事業の売り上げにも寄与する例になったと言える。京急電鉄の森山さんも今後について「流通に限らずグループ全体を巻き込んでやっていきたい」と強調する。

通常、駅名看板は広告として商品化していないというが、「旅客誘致につながるキャンペーンであればぜひご相談させていただきたい」と話す。今後はグループ内外のさまざまな企業との組み合わせで、駅名をもじった大喜利のような展開がこれまで以上に期待できるかもしれない。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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