アルピナ信奉者が驚いた「BMWへ商標譲渡」の意味 57年の関係を整理した先に2社各々の道筋が見える

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ミュンヘンから西へ車で1時間、ブッフローエにあるアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限/合資会社のヘッドオフィス(写真:ニコル・オートモビルズ合同会社)

商標譲渡後のアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限/合資会社は、ボーフェンジーペン社と名称を改めたうえで自動車の開発とエンジニアリング業務を続け、「新しいモビリティ」の開発にも挑戦するという。「われわれの深い専門知識とノウハウを活用し、これまでと異なる、印象的なモビリティを市場へ届け続けたいと思います」と、フローリアン・ボーフェンジーペンCEOはプレスリリースの中で述べている。

車両のチューニングや性能・安全性の検証、試作など自動車づくりの根幹であるエンジニアリングは、プロジェクトごとに社外へ委託されることも多い業務だ。BMWとの協力協定が解消されたあと、ボーフェンジーペン社は他の自動車メーカーの仕事を受けることも可能になる。

少量生産の内燃機関車は残る?

最も楽しみなのは「新しいモビリティ」に関してだろう。具体的に何を念頭としているのかはまったく明らかにされていないが、たとえばゴードン・マーレイ氏やジャンパオロ・ダラーラ氏のような独立した超高性能自動車メーカーとして、ボーフェンジーペン社ならではの洗練された少量生産車を生み出すことも期待できるのではないだろうか。ちなみにEUは2035年までに内燃機関車の全廃を打ち出しているが、年間生産数1000台未満のメーカーはこれを免除される方針である。

今回の商標譲渡の対価は公表されていないが、もう十分に裕福なワイン生産者であるボーフェンジーペン家は、来るべきそうした時代まで本当に優秀な技術者たちは手元から手放さなくてもいいほどの資本を、アルピナの商標と引き換えに手に入れたはずだ。

アルピナはワインのビジネスでも有名だ(写真:ニコル・オートモビルズ合同会社)

その前に、まずは2025年までに送り出されるアルピナの新作たちが、果たしてどのようにわれわれを魅了してくれるのかを楽しみに待ちたい。ボーフェンジーペン社が今後充実させるというクラシックカー事業に従い、これまで作られてきたアルピナ各モデルに関する修理用部品やサービスは長期的に保証される、というのも既存オーナーにとって嬉しいニュースだ。

田中 誠司 PRストラテジスト、ポーリクロム代表取締役、PARCFERME編集長

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たなか せいじ / Seiji Tanaka

自動車雑誌『カーグラフィック』編集長、BMW Japan広報部長、UNIQLOグローバルPRマネジャー等を歴任。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。近著に「奥山清行 デザイン全史」(新潮社)。モノ文化を伝えるマルチメディア「PARCFERME」編集長を務める。

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