AKB48の経済学 田中秀臣著~一貫した方法論で人気の秘密を分析
歌番組にCMにと、露出度が高く、メジャーとなったAKB48(エーケービー・フォーティエイト)だが、2005年、彼女たちが秋葉原の専用劇場で公演を始めたころは客もほとんど入らなかったという。そんな彼女たちが、なぜ成功するにいたったのか。メイン対象はAKB48だが、具体的な問題と一般的な方法論を結び付ける好例として、女の子がいっぱいいるグループくらいの知識しかない本誌の読者や、分析方法を学んでいる学生も楽しめるだろう。
流行や文化はその時々の経済情勢を反映すると著者はいう。経済停滞が20年も続いた結果、アイドル市場の中心を担う若者はデフレ不況世代となっている。その結果、内向きでおカネを使わないデフレカルチャーともいうべき傾向が現れる。これは日本全体の需要を縮小させる反面、これに即した新しいビジネスモデルを生み出すという。
低価格、秋葉原に行けばいつでも会える、演歌歌手のようにコアなファンを持つ、メンバー一人ひとりがブログを持つなどが特徴だ。一人ひとりの物語を大切にしながら、厳しい競争と公平さを保つというのは日本の教育に欠けているところだとも思ってしまう。一人ひとりのメンバーについての論評もあり、著者のコアなファンぶりがわかる。キャラをマトリクスで分類する経営コンサルタントのような分析もある。
AKB48の戦略は大相撲に似ているという意外な指摘もある。「間近でスターになっていく様をファンに見せたい」という仕掛け人の言葉が引用されている。相撲もコアなファンは下位力士から有望な力士を見出すのを楽しみにしている。韓国のアイドルグループ「少女時代」との比較考察もある。
細部にこだわる多彩な分析と一貫した方法論が楽しめる。
たなか・ひでとみ
上武大学ビジネス情報学部教授。専門は経済思想史、日本経済論だが、サブカルチャーにも詳しい。1961年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科単位取得退学。社会資本整備審議会委員、デフレ脱却国民会議呼びかけ人。
朝日新聞出版 1260円 222ページ
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