日銀が国債指し値オペで意図せぬ為替変動起こる 日銀の対応に市場の解釈割れ対話は一段と難しい

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日本銀行が28日、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指し値オペを通知したのを受け、為替市場は円安で反応した。指し値オペの有無で為替相場が変動することは日銀の意図するものではないが、2%の物価安定目標の実現が遠い中、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策で長期金利の上昇抑制を続けざるを得ない状況だ。

日銀が2月に続く指し値オペ発動で上限金利を0.25%に明確化したことについて、住友生命保険運用企画部の武藤弘明上席部長代理は「日銀は引き続き金融緩和を続けるという姿勢を示している」と指摘した。「日銀は日本のファンダメンタルズに沿った円安だとみている。日本経済にとって円安は今のところプラスが大きいという判断なのだろう」との見方を示した。

日銀が指し値オペを通知、長期金利は一時0.245%と上限に接近

日本銀行本店Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

米連邦準備制度理事会(FRB)は16日、高インフレや雇用拡大を踏まえて約3年ぶりに利上げを決め、継続的な引き上げが適切との見解も示した。物価目標の達成まで現行緩和策を続ける方針の日銀との方向性の違いを背景に円安が進行。28日の指し値オペ発動を受けて金利格差拡大を意識した円売りが強まり、ドル・円相場は一時2015年12月以来の1ドル=123円台を付けた。

日銀は円安を金融緩和効果の波及経路の一つと位置付けており、黒田東彦総裁は「全体として経済と物価をともに押し上げ、日本経済にプラスに作用しているという基本的な構図は変わりない」との見解を重ねて表明している。長期金利を低位に抑制するYCCは内外金利差の拡大を通じて円安を促しやすい政策だが、金融市場調節である指し値オペの有無で為替市場が反応することは日銀の本意ではなさそうだ。

住友生命の武藤氏は、指し値オペをやらなければ「日銀は本音では円安を止めたいと思っていると市場にとられてしまう」とも指摘する。

今後も長期金利が上限の0.25%近くに張り付くような展開になった場合、日銀が昨年3月に導入したより強力な連続指し値オペを発動する可能性もある。金利抑圧の見方が強まれば政策修正に対する思惑が再び浮上することも想定され、市場との対話は一段と難しいかじ取りになる。

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著者:伊藤純夫

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