重い新幹線を持ち上げる「脱線復旧機材」の正体 軽量だが力持ち、橋梁上やトンネル内で大活躍

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持ち運びを容易にするため、ジャッキ本体やレールにはアルミ合金やジュラルミンなどの軽合金を採用して軽量化している。ユニバーサル機器のKU-ULR-40JⅢA型の重量を例に挙げると、ジュラルミン製のジャッキ本体が27kg、台座となるキャリッジが9kg、ジャッキ用電動油圧ポンプが67kg、ジュラルミン製の横送り用レールが46kg(従動側)/53kg(駆動側)となっている。

脱線復旧機材のメリットは軽量かつコンパクトであることだ。そのため現場への持ち運びをスピーディーに行うことができる。

架線などの構造物を撤去せずに復旧作業を行うことができるほか、橋梁上やトンネル内など作業空間が制限される場所でも使用することができる。そのため、小規模の脱線復旧作業に向いている。

東日本大震災でも活躍

この脱線復旧機材は、2011年の東日本大震災で脱線した東北新幹線E2系の回送列車の復旧作業で活躍した。この脱線復旧機材はヘーゲンシャイト社製で、脱線現場付近にある新幹線総合車両センターに配備していたものだ。

今回の脱線復旧の様子を公開したJR東日本の写真にも、さまざまなサイズのヘーゲンシャイト社製ジャッキや、台車をジャッキアップさせて横送りする様子が写っている。

近年は各事業者の非常時訓練で脱線復旧機材を使用し、その様子が報道公開されることも多くなっており、脱線復旧機材を見る機会も増えている。

JR東海は2020年に総合事故対応訓練で新型の脱線復旧機材を公開した。従来は台車をジャッキアップして浮かせた後、横送り用のジャッキに架け替えていた。新型では車体をジャッキアップしてそのまま横送りを行い、その際に新開発の台車回転補正治具を併用して、従来のほぼ半分の30分〜1時間程度で載線が可能となったという。

台車回転補正治具は現場の社員が考案したということで、今後はそれぞれの事業者で独自の進化が見られるようになるのかもしれない。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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