「戦争」「崩壊」「混乱」 今年は為替が荒れる--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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ユーロの創設を支持したコロンビア大学のロバート・マンデル教授が、「世界の最適な通貨数は奇数で、3通貨未満が好ましい」と主張したことは広く知られている。言い換えれば、世界通貨は一つが好ましいということになる。

確かに世界政府が誕生すれば、一つの世界通貨が理にかなっている。だが今、単一で万能な中央銀行を設立する案に特段の魅力はない。米FRB(連邦準備制度理事会)による“量的緩和”政策の後に生じた、辛辣な批評とヒステリー状態を見るといい。投資家がドルから逃避する唯一の投資対象が金などの一次産品である世界でパニックが起こった場合を想像してみるといい。

ユーロ崩壊のおそれ 中国はインフレ濃厚

ただし今まで変動相場制度が成功してきたからといって、今後もうまくいくわけではない。今年も各国が為替相場の急激な上昇と輸出の落ち込みを阻止しようとする「通貨戦争」は続くだろう。そしてアジア諸国は通貨戦争で徐々に敗北するはずだ。最終的にインフレ圧力の高まりと貿易の報復の脅威に直面して、為替相場の切り上げを認めざるをえなくなる公算が大きい。

「通貨崩壊」の第1候補は間違いなくユーロだ。理想的な世界においては、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの過剰な政府債務と、スペインの自治体と銀行の債務に対しては、返済繰り延べなどの措置が採られるはずだ。同時に賃金の大幅な切り下げも行われ、これらの国の輸出競争力を回復することになる。

だが、ユーロ圏の政策担当者は、問題国に対するつなぎ融資を拡大するその場しのぎの政策を選び、市場が要求する持続可能な解決策を拒否している。厳しい財務状況から目を背けるのは大きなリスクだ。ユーロ圏の各政府が現実に立ち向かうまで、ユーロは脆弱なままだろう。

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