財務諸表では見えない未来の収益可能性を表現し、投資家に説明することが求められる。
企業価値の大部分が将来の「稼ぐ力」に対する期待で形成される時代だ。しかし、まだ見ぬ未来の稼ぐ力をどうやって説明すればよいのか。しかも気候変動の影響や人的資本の考え方を踏まえてとなると、ことさら難しい。ここでは先行事例をいくつか紹介する。これらを参考に自社なりの情報開示をつくり上げてほしい。
ESGへの取り組みがどれだけ企業価値の上昇につながっているか。製薬大手のエーザイは、2021年の「エーザイ価値創造レポート」(旧統合報告書)において、その効果を定量的に分析した結果を掲載した。
これは、ESGに関するさまざまな指標を向上させると、決算書では見えない“非財務資本”として企業価値をどれだけ生み出すかを具体的に示したもの。つまり、ESG投資がどれだけPBR(株価純資産倍率)を向上させるかを説明しているものだ。
エーザイの場合、貸借対照表に計上された純資産は約7300億円。一方、株式市場からの評価である時価総額は約2兆円。差額の約1.3兆円が、“見えない価値”に由来しているという考え方だ。
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