企業価値の新常識 「非財務」で生きる会社、死ぬ会社

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株価を決める最大の要因は財務情報ではなく“非財務情報”。これが世界の常識だ。日本企業もその荒波にのみ込まれようとしている。先行企業に学ぶ、生き残るためのすべとは。

アップルやグーグルの株価は上昇が続くが、その理由はバランスシートや損益計算書ではわからない。今や企業価値を決める最大の要因は、人材や技術力、ブランド、企業統治、環境変化への対応能力など財務諸表に載らない「非財務資本」だ。

非財務資本を厚くする努力に加えて、企業はマイナス情報を含めた「非財務情報」をうまく投資家に伝える必要がある。

優れた開示を行えば企業価値の向上につながる一方で、開示が不十分だとしびれを切らした機関投資家から株主提案を受けたり、株を売られたりすることになる。単に「温室効果ガスの排出を減らせばよい」と高をくくっていてはすぐ手遅れになる。

情報開示を迫られる企業に激変期が訪れるとともに、提出された情報をチェックする側の監査業界にも大きな波が押し寄せている。

監査法人は監査項目の増大で慢性的に人手不足だ。働き方改革が作業急増に追いついていない。そこで大手は監査先を絞り、監査報酬の引き上げに走る。その圧力に耐えかねた一部の企業は大手から準大手や中小へと鞍替えしている。

受け皿となった準大手・中小には規制強化が立ちふさがる。新たな登録制の導入案がまとまり、法改正を目指して国会審議を控えている。法案が通れば、中小監査法人や個人事務所が上場企業の監査から締め出されかねない。

企業価値の新常識をめぐる混乱とその対処法を追った。

週刊東洋経済 2022年1/22号
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大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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