大手は採算重視、中小は体制整備追い付かず。
「はっきり言って有価証券報告書は無駄の塊だ。投資家に役立つ情報はほとんどないのに、複雑で膨大な作業を短期間でこなさなければならないのだから」
都内で個人の監査事務所を構える公認会計士はこうぼやく。
会計士の業務負担は度重なる会計基準の変更と規制強化で日に日に重くなっている。IFRS(国際会計基準)は日夜アップデートされており、これと平仄(ひょうそく)を合わせる形で日本国内の会計基準も更新される。不正会計が明らかになれば、会計監査の信頼性を高めようと、規制も強化される。
加えて、非財務情報の開示対象も広がっており、会計士の負荷は高まる一方だ。AI(人工知能)やデジタルツール、外部委託の活用が進んでいるものの、会計士が目を通さなければならない情報はどんどん増える。業務負担軽減の取り組みが、非財務情報が重視されるようになるなどの変化に追いついていない。
こうした急激な変化のただ中で、会計監査の業界勢力図を塗り替えかねない事態が起きている。これまで上場企業の監査を「寡占」してきた大手の4大監査法人から、準大手や中小の監査法人へと顧客企業が“流出”しているのだ。
2021年6月までの1年間で124社が大手から準大手・中小の監査法人に乗り換えた。変更した理由として企業側が挙げた中で最も多かったのが「監査報酬」だ。
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