
明治安田生命の根岸秋男社長は「職業的な魅力や社会的地位を引き上げなければ、ターンオーバー問題は解決できない」と語る(撮影:尾形文繁)
国内の生命保険会社の営業職員として採用されるのは、年間約4.5万人。それに対し、仕事を辞めた営業職員はほぼ同数の同約4.3万人に上る(いずれも2019年度、生保15社の集計値)。生保各社はこの大量退職問題に長年、頭を悩ませている。
この実態は生保業界に共通する課題であり、業界3位の明治安田生命とて例外ではない。同社の場合、2019年度は5800人の採用者に対して5300人の営業職員が退職した。
生保各社はなぜ、「大量採用・大量脱落」(ターンオーバー)問題を解決できないのか。明治安田生命の社長で生命保険協会の会長も務める根岸秋男氏を直撃した。
仕事と処遇が見合っていない
――営業職員の課題は、「大量採用・大量脱落」(ターンオーバー)と「ノルマ」、それに「給与水準」の3つが重大だと考えられます。まず、ターンオーバーが数十年にわたって解決できない原因はどこにあると思いますか。
(3テーマは生命保険営業の)本質的なテーマであり、積年の課題だと考えている。
(離職が多いのは)第1に、生保営業の職業的な魅力度が高くないということが挙げられる。仕事の難易度に比べて、評価や処遇が見合っていない。
もう1つ、保険営業の仕事はやってみないとわからない側面がある。採用時点で(営業職員としての)適性を見極めるのは難しく、仕事を続ける中で向き、不向きがわかる部分がある。そのため、営業職員の育成には時間がかかり、それがターンオーバーの原因にもなっている。
さらに近年では、(セキュリティ強化などで)職場訪問が難しくなり、以前に比べて顧客にアクセスしにくくなっている。そこにコロナ禍が加わり、非対面での営業スキルも求められている。
職業的な魅力度や社会的な地位を引き上げなければ、この問題は改善できない。
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