日本生命の営業職員だった女性が同社を相手取り、民事訴訟を起こした。裁判を通じて明らかになったのは、パワハラや嫌がらせが横行する職員育成の実態だった。
「夫の支えがなければ、私はきっと自ら命を絶っていたと思います」。
悲痛な叫びをあげるのは、日本生命の営業職員として2016年から2017年にかけて神奈川県内の営業拠点で働いていたAさん(50代)だ。
Aさんは2020年秋、労働契約上の地位確認と上司のパワハラによる精神的苦痛に対する損害賠償を求め、日本生命を相手取って東京地裁に民事訴訟を起こした。
Aさんは訴訟の中で、①日本生命がうその説明をしてAさんを勧誘した②入社2年未満で育成中の社員にノルマを課し、ノルマ未達を理由に解雇した③ノルマ未達が雇用契約終了の条件になっていることについて説明しなかった④上司から執拗な嫌がらせやパワハラを受けた、などと主張している。
入社早々から上司の嫌がらせとパワハラ
Aさんは2016年夏に営業職員として日本生命に入社した。きっかけは、Aさんの夫の仕事の取引先が主催したイベントの手伝いに行ったところ、日本生命の営業職員のB氏(女性)から転職の誘いを受けたことだった。
後日、夫とともにB氏に会うと、B氏は会社案内(採用パンフレット)や自分の給与明細を見せながら、「日本生命では新人には2年間にわたり、育成トレーナーがついて丁寧な育成・指導を行っている」「毎月手取りで50万円程度の収入が得られる」などと説明したという。
Aさんが営業ノルマの有無について尋ねると、B氏はあるともないとも答えずに、「うちの会社は大丈夫よ、安心して」と言うだけだった。日生では「職選」と呼ばれる職員資格選考が3~6カ月ごとにある。
しかし、保険契約獲得などのノルマが達成できず、職選をパスできない場合に雇用契約が終了になることなどの説明は一切なかったという。職選では一定期間内の保険契約の件数や金額、顧客への訪問回数など、営業成績や活動内容などのノルマを達成できないと、減給や降格、雇用契約終了などのペナルティーを課せられる。
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