マネタイゼーションの懸念くすぶる米FRB
世界経済はとりあえず穏やかに2011年の幕を開けた。
何といっても、景気の二番底のリスク回避へ米FRB(連邦準備制度理事会)が放ったQE2(量的緩和第2弾)の効果が大きいだろう。今年6月末までの8カ月間で、新たに国債を6000億ドル(約49兆円)購入するという大規模な金融緩和策。
実際にその効果が最も出たのは、バーナンキFRB議長がQE2政策を示唆した昨年8月末から政策を発表した昨年11月3日前後までだったものの、株価の底上げ、ドルの水準切り下げに成功した。昨年末のクリスマス商戦は盛り上がり、自動車販売も増加している。
個人消費が活発化したことでムードは一変した。企業業績はもとより好調。12月の雇用統計も市場が期待したほどではなかったが、非農業部門雇用者数が10・3万人の増加で、うち民間部門が11・3万人の増加。サービス業での雇用が増え、着実に回復している。好調な経済指標が続くために、市場では昨年夏の二番底懸念をめぐる大騒ぎを忘れて、「QE2は必要なかったのではないか」という声まで出ているほどだ。
QE2止められない?
一方で、QE2に対する批判は導入前後の「実体経済には効果が薄い」「資産バブルを繰り返すのか」という観点から、「巨額の財政赤字のマネタイゼーション(財政の貨幣化)ではないのか」という観点に移ってきているという。
当初、財政支出は抑制せざるをえないために、金融政策に期待がかかるというのが市場関係者のロジックだったが、結局、ブッシュ減税(個人所得減税)も延長された。これが景気回復ムードを後押しする一方、財政リスクへの懸念を高めることとなった。
QE2導入前から予想されていたことだが、銀行の貸し出しルートは目詰まりしているので、ドルが市中に回ったわけではない。長期金利が下がり、設備投資や消費刺激に資する、ということもなかった。インフレ期待が高まり、長期金利がむしろ急テンポで上昇してしまったからだ。