続いて、商船三井の業績を見ていきましょう。損益計算書(8ページ参照)を見ると、売上高は前の期より5.3%増の8901億円となったものの、売上原価が7.3%増の8316億円、販管費が13.0%増の543億円と費用が膨らみ、営業利益は80.2%減の42億円となりました。
大幅な減益となった理由は何でしょうか。原因は3つあり、1つは、日本から海外に輸出する自動車の数量が減ったことです。国内の自動車メーカーは、生産拠点を海外に移しているため、主力事業である海外向けの完成車輸送が減少しつつあるのです。
2つめは、中国を中心としたアジアの新興国経済が低迷しているため、コンテナ船の輸送需要が減少したことです。これに伴って、運賃も下落しています。
なぜ商船三井は減益で日本郵船は増益だったのか
これら2つの要因は、商船三井だけでなく、海運業全体にも言えることです。それにもかかわらず、日本郵船が増益になったのは、低調なアジアの航路を改編したり、余剰船を削減したりという徹底したコストコントロールが業績に貢献したからです。
ちなみに、日本郵船の「売上原価率(売上原価÷売上高)」は、前の期と変わらず89.1%に抑えられていますが、商船三井は91.7%から93.4%まで膨らんでいます。ここから、日本郵船のコスト削減が大きな差をつけていることが分かります。
3つめは、液化天然ガス(LNG)船事業で船員訓練費用が増え、販管費が膨らんでしまったことです。
このように、海運業を取り巻く環境は、円安や原油安などの好材料がある一方で、全般的には供給過剰であり、海運市況そのものはそれほど強くないと言えます。
ただ、貸借対照表から安全性を調べますと、「自己資本比率(純資産÷資産)」は、日本郵船は31.7%、商船三井は32.9%と、どちらも安全圏に入っていますから、問題はありません。
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