民法改正でIT業界の請負契約は大きな影響を受ける。
民法改正によって、瑕疵(かし)担保責任が契約不適合責任に変更になったことはとくにIT業界には大きな影響を与えている。
システム開発の契約書には公的なバイブルがある。経済産業省が作っている「モデル契約書」である。
2019年12月にこの「モデル契約書」の民法改正版が公表されたが、契約条項について、従前と比べ大幅な変更があったのは、契約不適合責任だけである。もっとも、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更になり、責任の本質が変更されたわけではない。
IT業界における請負を考えた場合、「瑕疵」と「契約不適合」には、大きな違いはない。なお、契約不適合として発注者が受注者に請求できるのは、①修補(履行の追完請求)、②代金減額、③損害賠償、④契約の解除である。気をつけないといけないのは、責任の名前が変わった点ではなく、責任期間制限の起算点の変更である。
改正前の瑕疵担保責任では、売買の買い主が「瑕疵の事実を知った時」から1年以内に請求し、請負の場合は目的物の「引き渡し」から1年以内に請求しなければならなかった。それが改正法の契約不適合責任では、売買・請負とも、「不適合を知った時」から1年以内に相手方に通知することが要件となった。売買と請負で期間制限を異にする理由はないというのが改正理由である。
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