映画業界絶好調の陰で苦悩するアート系映画

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このように厳しい環境にあるアート系映画だが、はたして活路はあるのだろうか。

アート系映画に求められる工夫

映画監督の大森一樹氏は、「今の映画の作り方は、カネを使いすぎ。製作費を削減して興行が成り立つ水準にしないと変わらない」と語る。その場合、作品のクオリティを下げるのではなく、努力と工夫がもっと必要になる。 

同監督が手掛けた『世界のどこにでもある、場所』では、撮影時期に日照時間の長い5月を選ぶことで、撮影日数の短縮化・制作費削減を実現した。最近は、著名な監督が低予算で映画を制作するケースもあるという。

劇場側も、「客の呼べる映画も大切だが、原点回帰も必要。映画館の独自性が出る作品をラインナップしていく」(東京テアトルの高原氏)と話す。同社では、映画館ごとに地域やファン層に合わせた作品を上映していく方針だ。

アート系作品の衰退は、日本の映画文化の発信力低下につながりかねない。多くの人々が楽しめる大作も重要だが、アート系作品のような映画が続々と誕生し、映画ファンがそれを楽しめる環境を作っていくことも、同じくらい大切ではないだろうか。

(宇都宮 徹 撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済2011年1月22日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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