映画業界絶好調の陰で苦悩するアート系映画

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


シネセゾン渋谷は、アート系の作品などを多く手掛ける映画興行会社・東京テアトルが運営する映画館。同社が09年に運営を引き継いだシネカノン(10年1月に民事再生法申請、事実上倒産)系の映画館(ヒューマントラストシネマ渋谷)との再編・統合の一環との説明はあるものの、往年の映画ファンから閉館を惜しむ声は多い。

1館1映画では成り立たない

ここ数年、映画業界では二極化が進み、興行収入の多いメジャー系映画と、それ以外の映画との差が大きくなっている。ミニシアターやインディペンデント系といわれる映画館が厳しいのは、いわゆるアート系映画に対する若者の映画離れがあるからと指摘されているが、それ以外にも、構造的に苦しい事情が横たわっていたことも事実だ。

かつて、ミニシアターなどで上映されるアート系映画は「単館映画」と呼ばれ、その名のとおり、一つの映画館でしか上映されなかった。映画館側も独自色を打ち出し、その映画館ならではのラインナップをそろえていたし、映画配給会社も、映画館の特性を把握したうえで作品に合った映画館を選んでいた。

しかし00年以降、状況が変わった。「単館拡大」という言葉が登場し、一つの作品を多くの映画館で上映するようになったのだ。結果、観客の分散化が進むことになり、映画館の観客動員数は減少傾向となる。「どこでも見られる」状況となったため、映画館の独自色も打ち出しにくくなってしまった。

こうした変化の背景として、制作費や映画の買い付け費、宣伝費の高騰を挙げる関係者は多い。とりわけ、映画をメディアに露出させる宣伝の費用は高止まりが続いている。大手のメジャー系が配給する映画は、多額の宣伝費をバックにテレビや各種媒体への露出が増えている。それらに対抗し、映画業界の中で作品が埋没しないようにするには、ある程度の宣伝費が必要となる。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事