映画業界絶好調の陰で苦悩するアート系映画
配給・宣伝を行うアニープラネットの佐藤純子代表取締役は、「洋画の場合、昔に比べて買い付け費用が高騰した」と指摘する。アート系映画のブームが起こった1980年代以降、アート系作品を手掛ける配給会社が多く誕生したことで作品の買い付け競争も過熱、価格が高騰していったのだ。すると「1スクリーンでは収益が上げられないので、多くの映画館で上映するようになった」(佐藤氏)。
ビジネスモデルの変化も、こうした流れに拍車をかけている。以前、映画のビジネスモデルといえば、映画館での公開による売り上げが芳しくなくても、その後に発売されるDVDやテレビ放映、グッズなどの関連商品の収益で、何とか黒字化できるケースも多かった。
しかしDVD市場が縮小している。日本映像ソフト協会によると、ソフト売上高はピークの04年3753億円から09年2739億円と、7割程度に激減した。そのために、「映画興行で収益を上げようとする傾向が強まってきた」(前出の大高氏)。
映画館側にとっても「単館拡大」スタイルはメリットがある。数カ月もの間上映するロングランの場合、その映画がヒットするかしないかで収益に与える影響は大きい。年間の上映本数を多くし、1スクリーンで1日2~3本の映画を上映すれば、リスク回避につながる面もある。
だが、上映時間が限定されると、見たい映画が見られないことにつながる。「単館拡大」が客離れの一因となった可能性は否定できない。
シネコンでの上映は大型話題作が中心
「邦画を中心に映画作品はバブル状態。乱立ぎみ」(映画興行会社・東京テアトル広報担当の高原太郎氏)との指摘がある。