米国の雇用統計が大幅改善という“誤解”
1月7日に発表された、米国の2010年12月分の失業率。前月の9・8%から9・4%へと低下したことで、雇用情勢が「大幅改善」したとの印象も与えている。だが、それは統計手法による誤解であり、実態の厳しさは何ら変わっていない。
確かに失業者数は1448万人と前月比56万人減少、前年比でも73万人近く減った。失業者数を労働力人口で割った失業率が低下し、非農業部門雇用者数は10万人増と続伸。非常に好ましい結果に映る。
しかし詳細に見れば、印象は変わる。統計上の失業者というのは「過去4週間に就職活動をしたが就職できなかった人」を指す。そもそも就職活動をしていない失業者は統計上の失業者として数えられない。労働力人口(就業者+失業者)にも入らず、“非労働力人口”として扱われる。
実はこの非労働力人口が43万人も増えている。人口全体が17万人強増加したのに、労働力人口が26万人減少したためだ。非労働力人口には定年退職者や学生、主婦も含まれるが、先月まで就職活動していた失業者が活動をやめ、統計上の失業者から外れたのも大きいとみられる。実際、統計上の「就職を断念した人」は約132万人と、前月比で4万人近く、前年比では約39万人も増えた。
労働力人口を全人口で割った労働参加率は64・3%と前月から0・2%ポイント低下。実に1984年以来の水準まで低くなった。労働力人口に占める就業者の割合を示す就業率も58・3%と、ほぼ最低水準が続いている。