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「社会から遠ざけられた“死"が実は身近にあると再認識した」 アフターコロナを聞く 3|科学哲学者・科学史家 村上陽一郎

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これから社会の価値観はどう変わっていくのだろうか。『ペスト大流行』などの著書がある、東大、ICU名誉教授の村上陽一郎氏に聞いた。

──ウイルスの流行は収束に向かっているように見えます。今回のコロナ禍をどう見ていますか。

むらかみ・よういちろう 1936年生まれ。東京大学教養学部卒業。東大教養学部教授、国際基督教大学(ICU)教授を歴任。著書に『ペスト大流行』『安全学』など。

流行状況についての見方はあるが、少なくとも観測できる感染者数は緊急事態宣言によって明らかに減った。他国に比べると緩い、強制力のない自粛要請という政策に、国民が非常に見事に反応したからだ。政府に従順すぎるという議論があるかもしれないが、単なる従順さだけで割り切ることができないような社会全体としての良識が働いた。

一方で、国民の間には多くの不安と不満が渦巻いていて、安倍政権にぶつけられている。成果を上げているにもかかわらず満足感はそうとう低い。科学的には結果を出したように見えても、科学の外側にある経済社会の問題への手当てが遅く、説明も不十分だからだ。

ただ、どんな施策を実行してもしなくても、「すべきことをしなかった」「すべきでなかったことをした」という批判は後から必ず出てくるものだ。そういった意味では、コロナ後の社会が持っていてほしいのは、ベターな解で満足する度量や余裕、寛容さだ。今回の災禍はそれを考えるきっかけになるはずだ。

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