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もはや温暖化対策は待ったなし 化石燃料からの脱却に動かぬ日本

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石炭火力発電所の閉鎖を求めるドイツの環境保護グループ(共同通信)

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世界の主要国が進めたロックダウン(都市封鎖)などの政策が、エネルギー需要を大幅に減少させている。

都市封鎖をきっかけにガソリンの需要が激減。貯蔵施設の確保が困難になるとの見通しから、原油先物価格(WTI)が一時マイナス価格をつけるという前代未聞の事態が発生した。

国際エネルギー機関の予測(4月30日発表)によれば、2020年のエネルギー需要は昨年と比べて約6%減少し、それに伴って二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出も約8%減るという。減少率の大きさは第2次世界大戦終結時以来となる。中国やインドなどの新興国では、窒素酸化物ほかによる大気汚染が劇的に改善。呼吸器疾患などによる死亡者が減ると予測する専門家もいる。

新型コロナは失業や企業の倒産、貧困の拡大などを通じて経済・社会に計り知れないダメージを及ぼす一方、環境負荷の低減という、思いもよらぬ副次的効果をもたらしているのも事実だ。

しかし、エネルギー生産の多くを石油や石炭などの化石燃料に依存する現状はすぐには変わらないため、生産活動の再開とともに大気汚染は再び深刻化する。また、都市封鎖による需要減とCO2の排出減によっても、地球温暖化の原因物質である大気中のCO2の濃度全体に与える影響は極めて小さく、その増加ペースはほとんど変わらない。

現在のペースで大気中のCO2濃度が高まり続けた場合、今世紀末時点での地球の平均気温は産業革命時と比べて4度の上昇が見込まれる。自然災害の増加にも歯止めがかからなくなる。

こうした事態に危機感を強めているのが欧州連合(EU)だ。「欧州グリーンディール」と呼ばれる気候変動関連政策の第1弾として、50年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとすることを盛り込んだ「欧州気候法案」を提出。実質ゼロ達成のためEU全体での中間目標として、30年の温室効果ガス削減目標を、現在の1990年比40%減から50〜55%減に引き上げる。

脱炭素に動く欧州の狙い

同法案の発表は新型コロナパンデミック直前の3月4日だが、その後もEU主要国は法案成立へのスタンスを維持。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は都市封鎖さなかの4月9日、新型コロナ対策と地球温暖化問題に一体で取り組む必要性を訴えた。

すでに一部の国では、パンデミック後の経済復興に向けて、支援対象企業にCO2削減目標を設定させる動きも見られる。フランスは4月29日、エールフランス航空に対する支援の条件としてCO2排出量を24年までに50%削減するとともに、鉄道など代替手段のある所への近距離便の数を減らすよう求める方針を打ち出した。

一方、日本の動きは鈍い。日本政府はコロナ禍のさなかの3月30日に「国別削減目標」を提出したが、30年度までの温室効果ガス削減目標(13年度比26%減)を据え置く内容となっている。こうした日本の姿勢は、「目標を強化しなくてもよいというメッセージを世界に向けて発信するものであり、他国の目標強化の意欲をそぐことになりかねない」(国際環境NGOのWWFジャパン)などと、強い批判にさらされている。

日本はパンデミック対応として、事業規模で200兆円を上回る経済対策を打ち出したが、そこには気候変動問題への視点はほとんど見られない。地球温暖化が進めば感染症のリスクも高まることは事実なのに、無策に等しい。化石燃料の大量消費に基づく経済・社会の見直しに踏み出さなければ、パンデミックが収束したとしても未来は明るくない。

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