2021年に延期された東京2020オリンピック・パラリンピック大会の開催が危うくなっている。
国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長が5月21日、ワクチン開発がなされても十分に行き渡らなければ中止する可能性に初めて言及したからだ。IOC創設者のクーベルタン以来、感染症対策をおざなりにしがちだったオリンピックの歴史は、転換点を迎えた。
「症状があまりなくても、医者が来るまではベッドで待つ」「とくに肺合併症がある人は、隔離する」。新型コロナ対策のような文言が並ぶポスターは、ベルギーのブルージュ医療委員会が1918年11月4日、スペイン風邪拡大を阻止するために作成した。14年7月に勃発した第1次世界大戦の終結1週間前に当たる。
スペイン風邪は18~20年に発生した史上最悪のパンデミック(世界的大流行)を引き起こしたインフルエンザ。感染者数は約6億人、死者は約2000万~4000万人に上る。大戦中だったため、各国で情報統制が行われ、感染拡大に拍車がかかった。中立国スペインのメディアがいち早く伝え、病名に国名を冠せられた経緯がある。
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