居住制限策も浮上、江東5区など整備が依然不十分な首都圏治水の現実。
「ドアや壁、床などほぼ全面的なリフォームが必要で、地方に家を一軒建てられるほど費用がかかる」。昨年10月の台風19号で、東京都大田区田園調布にある住宅の1階部分が浸水する被害にあった女性はこうため息をつく。
今でも「水が入ってきた瞬間」が忘れられない。仕事から帰る途中、激しく増水する多摩川を見ながら、「これはまずい」と思った女性は両親と子どもを避難させ、夫と2人で家に残った。ドアの前に土嚢(どのう)を積んでいると、家が停電。まもなく床下収納のふたが盛り上がってきた。夫と必死に上から押さえるも、あっという間に水が入ってきてしまった。心配した父親は避難所から帰ってきた。避難所ではひざほどだった水位は、自宅そばでは胸近くに。自宅前の道路をほぼ泳いで帰ってきた。近くにはコイも泳いでいたという。
水害に脆弱な首都圏
昨年10月12日に伊豆半島に上陸した台風19号は、記録的な大雨によって各地に深い爪痕を残した。全国71河川で140カ所の堤防が決壊。茨城県を流れる那珂(なか)川や荒川水系の都幾(とき)川、越辺(おっぺ)川など、国が直接管理する河川でも堤防の決壊が起きた。浸水面積は2万5000ヘクタール、浸水被害を受けた建物は7万棟以上、死者90名・行方不明者9名に上った。
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