ゼロ食品氾濫が映す、食品表示の後進国ニッポン

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 栄養表示がメーカーの任意なことに加え、食品添加物表示でも、日本では複数の添加物を「乳化剤」など一括表示することが可能。主要原材料の%表示も必要ない。海外の表示規制と比較すると、日本では消費者への情報提供は乏しく、ゼロ表示のような誤解を与えかねない表示には、規制が不十分なのは明らかだ。

なぜ日本の食品表示はこんなにも世界基準と懸け離れているのか。

食品コンサルタントで世界の食品表示に詳しい藤田哲氏は「国連では、食品表示を消費者の健康保護、公正な貿易の確保と定義。他国はそれを受け早くから食品表示に関する法案を一本化してきた。一方、日本では生産者目線の行政が長年続いてきた」と指摘する。日本では食品表示をめぐる法律が目的によって複数存在し、監督省庁も複数にまたがる。複雑な管理体制の是正に向け、09年に消費者庁が発足したが、法体系は旧来のままだ。


罰則規定も緩い。韓国や米国では違反後に即刻、罰則が適用される。だが日本のJAS法では、指導、指示、命令、罰則の4段階に分かれている。業者名の公表を避けるため「指導」処分に軽減する例も過去には見られた。結果、日本で業者名の公表に至る件数は50件前後、韓国では年間1500件程度とその差は歴然としている。

消費者庁は「食品表示の国際化」を目指し、昨年12月から栄養成分表示の検討会を実施。だが、議論の中心はトランス脂肪酸含有量の表示と栄養成分表示の義務化にとどまる。藤田氏は「厳罰化や主要成分の%表示など、先に手をつけるべきことは多い」と“本丸”に踏み込まない国際化に疑問を投げかける。

メーカー側に甘い表示規制のあり方を根本的に見直さないかぎり、消費者目線の食品表示の実現は遠い。

(麻田真衣 =週刊東洋経済2011年1月15日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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