知られざる、もう一つのカー・オブ・ザ・イヤー 自動車業界も注目した「あの日」を回顧

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自工会クラブの記者は、日頃は「抜いた」「抜かれた」のスクープ合戦を繰り広げながらも、クラブ内では他紙の記者と談笑することしばしばだ。当時、日本工業新聞の自動車キャップと、日刊工業新聞キャップはともに気さくな人柄で、仲が良かった。ある日、2人でCOTYの話題で盛り上がったらしい。「おい、千葉、ちょっと来い」と2人に呼ばれて、とんでもない仕事を言い付けられた。

「自工会クラブでカー・オブ・ザ・イヤーをやろうと思うんだ。あとはお前に任せるから、よろしくな」―どうして、そんな話になったのかは判らないが、イヤーカー選びに狂奔する自動車業界を少し皮肉ってやろうと思ったのかもしれない。毎年の年末に開かれる自工会クラブの納会でその結果を公表することになった。

さっそく投票用紙を作成し、1位5点、2位3点、3位1点で、今年を代表するクルマ3車種を選び、選定理由も記入してもらった。経団連機械クラブに在籍する自動車担当記者も含めて、ほぼ全員が協力してくれたと記憶している。さらにワープロを使って表彰状を作成し、書道歴10年以上の腕前を活かして大判の消しゴムをカッターで彫って「自工会クラブ」の印鑑も用意した。

自工会クラブの納会で発表

自工会クラブの納会は、記者と自動車各社の広報担当者がそれぞれ年末の挨拶を行うのは大変なので、一斉に介して懇親する恒例行事だった。記者クラブで報道発表する自動車メーカーの広報担当はほぼ全員が出席するので、納会の場で発信された情報は間違いなく自動車業界全体に知れ渡ることになる。

とは言え、自工会クラブ版カー・オブ・ザ・イヤーは別にCOTYやRJCに対抗するわけではなく、あくまでも「パロディー」版である。イヤーカーは、クルマそのものの走りや性能の良さなどを評価して選ぶものであり、私のような自動車オンチがイヤーカー選びをするなど“おこがましい”ことは百も承知。選定基準もあくまでも経済記者としての判断に任せた。ただ心配したのは、クルマの評価で選んだわけではない自工会クラブ版カー・オブ・ザ・イヤーの情報が外部に漏れると独り歩きして、一般消費者に誤解を招く可能性があることだった。

「自工会クラブ版カー・オブ・ザ・イヤーは、あくまでもクラブ納会の“余興”です。自工会クラブで対外的に結果を発表することはありません。その場限りの話題提供ですから、外部には情報を漏らさないでくださいよ」。

事前に自工会クラブの記者はもちろん、自動車各社の広報にもしつこく説明した。年末の忙しい時期に、自分ひとりで準備に追われていたのだが、当初の意図に反して自動車業界内では自工会クラブ版カー・オブ・ザ・イヤーに対する注目が高まっていったのである。

(第2回に続く…12月29日配信予定)

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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