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Interview|上智大学教授 島薗進 「それでも宗教が果たすべき役割はある」

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しまぞの・すすむ●1948年生まれ。東京大学文学部卒。東大教授(宗教学)などを経て現職。上智大学グリーフケア研究所長。専門は近代日本宗教史、死生学。(撮影:尾形文繁)

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オウム真理教という宗教団体の特徴は、高学歴の20代男性が多かったことだ。まだ社会経験の少ない若者を出家という形で一般社会から切り離し、勢力拡大のために攻撃的に動く。攻撃的な宗教運動は1970年代から世界的に目立つようになってきた。オウム事件は日本の特殊ケースとみられがちだが、事件当時から米国の研究者たちは強い関心を持っていた。実際、数年後にはニューヨークで同時多発テロが起きている。そうした世界的潮流の中でとらえる必要がある。

共通点は、世界の終わりは近い、現代社会のありようは間違っているとする教義の下、自分たちの仲間だけで閉じこもることだ。家族、社会生活を犠牲にして宗教に走る傾向がある。そこには新しい宗教への希望、渇望がある。たとえば日本の仏教では、出家と在家の区別が薄い。オウムは在家的な仏教のあり方についての疑問を出家主義で拾い上げ、パワーを持った。

日本では80年代に入り、高い教育を受けて経済発展を成し遂げても、いい社会への展望が持てないという雰囲気が広がった。勤勉で知的能力はあるが人生の意味を感じ取れない若者たちが、断固として最終解脱という深遠に見える目標を説く、オウム教祖の松本智津夫・元死刑囚に心酔してしまった。

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