科学的に厳密に評価すれば、がん検診に大きな問題があるのは明らかだ。
2016年1月、世界的に権威のある医学誌『英国医師会雑誌』に掲載された論文によると、各種のがん検診について調べたところ、総死亡率が減ることを証明した研究は一つもなかった。つまり現在のところ、がん検診によって長生きできることを示すエビデンス(科学的証拠)は一つもないのだ。
多くの人が有効だと信じ込んでいる乳がん検診(マンモグラフィー検査)一つとっても、ここ数年、欧米からは有効性(死亡率を減らせる効果)に疑問符がつく研究報告が相次いでいる。日本乳癌学会も15年の「乳癌診療ガイドライン」改定で、40代以上の乳がん検診の推奨度を「A」から「B」に格下げした。
さらに、欧米では検診によって、命にかかわらない治療の不要な「がん」を見つけてしまう「過剰診断」が大きな問題となっている。米国では過去30年間の検診データを検証した結果、発見された乳がんの約3分の1、すなわち約130万もの人が過剰診断を受けたと推計する論文が12年に出ている。
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