日本の医療現場は長らく「薬漬け、検査漬け」といわれてきた。一人の医師が大勢の患者を診療しなければならず、高い効率が要求される中で病気の見逃しや重症化を避けようとすると、「念のため」の薬や検査が増えてしまいがちだ。
だが、それが必ずしも望ましい姿ではないことは医師もわかっている。2018年1月に医師940人(うち91%が臨床経験10年以上)を対象に行われたインターネット調査で、「過剰だと思う検査」の割合を答えてもらったところ、20%(中央値)に上り、不要な検査はまったくないと答えたのは64人にすぎなかった。米国の医師が対象の調査でもほぼ同じ結果で、検査の24.9%、薬の22.0%は不要と認識されている。不要であるにもかかわらず行ってしまう理由も日米で共通しており、「医療訴訟が怖いから」「患者が要求するから」「以前の医療記録にアクセスするのが困難だから」がトップ3だ。
患者に不利益が及ばなければ問題ない、と思うかもしれない。だが実際にはX線検査では放射線被曝が避けられないし、薬には副作用がある。特に高齢患者への多剤併用は、薬同士の相互作用、調剤の誤り、飲み忘れ・飲み間違いなどによる害(ポリファーマシー)が生じやすいことが知られている。当然ながら費用も余計にかかる。
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