東京電力、「再値上げ1年封印」の真意 原発なしで増益だが、再値上げの可能性も
これにより、東電は17日に2015年3月期業績予想の修正も発表。通期連結の営業利益は3230億円、経常利益は2270億円、純利益は5210億円の黒字となる見通しとした(純利益には原子力損害賠償に関連した交付金の特別利益が含まれる)。
この経常利益の水準は、2014年7月から原発が順次再稼働することを前提とした新総特の目標を上回るものだ。
東電は当初の総特で2013年度からの10年間累計で総額約3.4兆円のコスト削減を目指していたが、新総特では総額4.8兆円に拡大。今回、數土会長は「さらに8000億~1兆円を上積みしたい」と述べた。2010年度には15%だった競争入札比率を2015年度に1年前倒しで60%まで引き上げることによる資材調達費の削減や、2014年10月に基本合意した中部電力との包括的アライアンスによる燃料・発電コストの削減なども中長期的に追求する。こうした新たな合理化策と収益計画を織り込んだ形で新総特を見直し、国や金融機関の理解を得たい考えだ。
なぜ値上げ見送りは1年だけなのか
今期2270億円の経常益を計上できるのなら、2015年だけでなく、2016年以降も原発再稼働の有無に関係なく、再値上げの必要はなさそうにも思える。
しかし東電は、2014年度については依然、緊急避難的なコスト繰り延べが1700億円規模の状況にあり、こうした繰り延べを後年度も続けるのは限界としている。2015年度からは反動で負担が増え、原発再稼働がなければ業績が悪化する懸念が強いという。
また、東電は向こう2年間で新規で3000億円、社債償還の借り換えで1兆円の計1.3兆円の資金調達の必要があり、「キャッシュフローに大変な危機感を持っている」(數土会長)。金融機関や投資家からの信頼を得て円滑に資金調達するには、業績安定化が欠かせない。そのため、2015年中に原発の再稼働がなければ、2016年からの再値上げを検討する姿勢だ。
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