むしろ私の目には、安倍首相が少し意気消沈しているように見えます。一方、新年に向けた政策目標は非常に詰まっています。首相は景気対策の準備をしなければならず予算案を通す必要があります。直近の課題としては、原発再稼働の問題も立ちはだかっています。そう遠くない時点で、集団的自衛権の行使容認など、国の安全保障に関する法律についても、国会を通過させる必要があるでしょう。これからの半年は、息をつぐ暇がないほどやるべきことがあるのです。
こうした課題を遂行する上で、安倍首相を楽にする材料の一つとしては、賃金上昇の明確な兆候があります。賃上げはアベノミクスが進める経済政策の足場をより堅固なものにしてくれます。しかし、経済政策は簡単ではない。一つ誤ったステップを選ぶだけで、人気を落としかねないような非常に多くの課題が待っています。
――公明党が議席を増やしたことが与える影響をどうみますか。
公明党が議席を少し増やしたという事実は、次世代の党が崩壊したという事実に比べると重要性に欠けます。与党の政策に同調的だったみんなの党も、渡辺喜美氏と共に消えてしまいました。
集団的自衛権に関する多くの議論がなされていた夏場までは、もし公明党が自民党と協調しなければ自民党は他の政党を連立政権のパートナーに迎えるかもしれないと言われていました。これは公明党にとって難しい問題でしたが、今となっては、その脅威は存在していません。そのことが持つ意味は大きいと思います。
民主党は改善に向かっていく
――野党はどこに行くのでしょうか。
民主党にとっては、これからは物事が良くなるばかりです。この政党は2年間を無為に過ごしたといえるでしょう。海江田万里代表が議席を失い辞任を余儀なくされたため、民主党は今こそ、真に人々を惹きつけるビジョンを示すことができる新しい指導者を選出するチャンスを得ています。適した候補としては、枝野幸男氏を含む何人かの議員がいます。
この際、執行部においても、一定の世代交代が必要になるでしょう。民主党はこれまで中間ランクにいた人々を上のポジションに昇格させ、何か新しいことに挑戦する必要があります。
懸念もあります。民主党は期待されたほどの議席を獲得することができなかった反面、維新の党は予想を上回る善戦をしました。そのため、もし自民党に対抗する新しい政党を作る話し合いが持たれるようになれば、民主党は選挙前に考えられていたような強い立ち位置で交渉に臨むことはできなくなったといえます。
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