2013年度の輸入実績84.6兆円のうち、鉱物性燃料は28.4兆円と約3分の1を占めている。これこそ日本が、毎年買い続けていかねばならない輸入エネルギーの総コストである。「原油及び粗油」はそのさらに半分を占めるが、それ以外の石油製品、LNG、LPG、石炭なども、何らかの形で石油価格に連動することになっている。
仮に鉱物性燃料全体が前年比で約2割安くなると想定すると、それだけで前年比で5~6兆円が浮く計算になる。今まで産油国に還流していた消費税2%分の国富が、国内に留まってくれることになる。GDPで言えば、約1%分のサポート材料となる。
日本経済にとっての「最大の成長戦略」とは?
ガソリン代や電気代が下がって家計部門の可処分所得が増えるとともに、企業部門ではコストが下がることになる。このことは日本のみならず、石油を輸入に頼っているアジア経済全体にとってのグッドニュースである。
それだけではない。12月に入って、石油価格の下落速度があまりに速いので、産油国通貨が投げ売りされるなどの事態が起きている。ロシアのルーブルは下落が止まらず、中央銀行が短期金利を10.5%から17%に引き上げて防戦に懸命だ。つられて他の新興国通貨も不安定になってくる。そうなると安全通貨ということで円が買われる。ドル円レートは久々に1ドル=116円まで買い戻されることとなった。
これも大事なところで、いくら石油価格が下がっても、それ以上の速度で円安が進んでは困るのである。選挙期間中にも「これ以上の円安は中小企業の負担を増やすだけ」といった批判が絶えなかった。かと言って、黒田日銀総裁が「何が何でもインフレ目標2%」と言っているからには、円高にはなりにくい。まして米国経済は、2015年は利上げを見込んでいるから日米金利差は拡大する。トレンドは円安方向なのだ。
ところが新興国通貨の動揺は、さりげなく円の値打ちを110円台に押し戻してくれた。実体経済にとっては、「為替で110円台、石油で70ドル台」というのが、もっとも心地よい水準ではないかと思う。
なかなか狙っても、ここまでうまくいくものではない。ことによると日本経済にとって最大の成長戦略は、「ツイてる長期政権」ということになるのかもしれない。
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