坂口 本当にうまい仕掛けですよね。一方イオン葛西店は「GG戦略」と銘打って、様々な取り組みを行っています。
「GG」とは、「グランド・ジェネレーション」のことで、「威厳がある、最高位の世代」と意味で、要は高齢者をターゲットにしているということです。
常見 ジジィかと思いました(笑)。
坂口 まずは安いコーヒーを用意して、たまり場として使ってもらえるようにし、さらに子供から高齢者までを対象としたプログラムのある「イオンカルチャークラブ」というカルチャーセンターを作り、ゲームコーナーにはお孫さんとおじいちゃんが一緒に楽しめるゲームスペースを併設しています。極め付けは、いくつかの店舗では駅からの無料送迎バスを用意していることです。
このようにおじいさん、おばあさんとそのお孫さんをターゲットにした導線、スペース、プログラムがしっかりと用意されているので、「買わせること」を第一目的にしていないのに、結果「買っていく」という消費の流れができています。
常見 まさにイオンに家族で「集まって、消費してもらう」ための仕組みが完成しているのですね。
高齢者を囲い込むローソンの切り札
坂口 さらに高齢者にターゲットを絞ったサービスを行っているのが、ローソンです。ローソンはコンビニチェーンでは珍しく47都道府県のすべてに出店していて、過疎地へも出店をしています。
実は2013年10月に愛称をCMでお馴染みだった「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」へと変更して、地域におけるより価値のある存在になる方向性を明確化しています。
常見 その重視する「地域」において、具体的にローソンはどんなサービスを展開しているのでしょうか。
坂口 実は最近、2015年度をめどに、アマゾンの商品を店頭情報端末「ロッピー」で購入できるようになるサービスをはじめると発表しました。
常見 え、それって新しい取り組みなのでしょうか。
坂口 確かに店頭受け取りだけならば、セブン-イレブンのセブンネットショッピングというサービスがありましたし、各ビジネス誌は「まったく新しくないのになぜ発表するのか」という反応でした。しかしこれはローソンの狙いを勘違いしているのです。
常見 どういうことでしょうか。ただの店頭受け取りではないのでしょうか。
坂口 「ロッピー」から注文できるということですが、もし高齢者の方が注文することができなければ、オペレーターが対応してくれるところがポイントです。しかもオペレーターが「探し方」を教えるのではなく、「一緒になって商品を探してあげる」のです。そこまでやるところに、今回のローソンとアマゾンが提携した意味があるのです。
常見 「コンビニ=若者のたまり場」というイメージがありますが、実は多くの高齢者がコンビニを利用していますよね。このサービスはボリュームを持った高齢者層に、店頭にはない商品まで買っていただくということが狙いですか。
坂口 もちろん、そういった要素もあります。しかしさらに高齢者に「ローソン、アマゾンはこういう会社なんだ」というようにオペレーション付きで使ってもらうことでサービスを理解してもらって、リピート率の高いことで知られる高齢者を囲い込むビジネスモデルです。
常見 なるほど。サービスの「存在」と「使い方」さえ覚えてもらえれば、過疎地であろうとも、高齢者にとってその「地域」における存在感の大きな店舗になれるということですね。
イオンとローソンの事例を見ていると「高齢者」と「リアルの場所」を繋ぎ合わせることで「消費」が生まれることに、各小売店が注目して始めていることが分かりますね。
クリスマス、年末年始を寂しく過ごすボッチたちを救済する企画から始まったのですが、消費の最前線を知ることができ、大変勉強になりました。ありがとうございました!
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