イマドキのイオン事情
坂口 オフラインの価値については、楽天の三木谷さんが昔から「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)」ということを提唱されていました。オンラインで集客するけれども、最後は消費者がオフラインで集まることができる場所を作る模索をしなくてはならないということです。
ほとんど同じ意味でウォルマートは「Site to Store(サイト・トゥ・ストア)」ということを言っています。これもインターネットサイトで消費者を集めて、最後はショップで買い物してもらうということです。
常見 楽天もウォルマート、どちらも結局は「オフラインの実際の店舗で消費者をいかに囲い込むか」というところで勝負しているわけですね。
坂口 おっしゃる通りです。「実際の店舗に消費者を囲い込む」ということでは、イオンが面白い取り組みをしています。
ダイエーを吸収したイオンの業績は、コンビニ各社に比べて良くはありません。しかしイオンの中でも業績の良い岩手県のイオンスーパーセンター陸前高田店と東京都江戸川区のイオン葛西店はどちらも「集まり消費」を誘発するような取り組みをしています。
常見 イオン全体で見ると、本業のスーパーが赤字という状況ですよね。その中で好調とは。いったいどんな取り組みでしょうか。
坂口 岩手のイオンスーパーセンター陸前高田店ではお客さんを集めて、何とゴルフコンペをしています(笑)
常見 衝撃です(笑)。ゴルフコンペ…。イオンの主催でお客さんがゴルフ場に集まるワケですね。
坂口 そうなのです。「インターネットの時代にご年配の方々を集めてゴルフコンペなんて・・・」と笑われかねませんが、業績が好調だから文句は言えません。内容はシンプルにお客さん、店員さん、店長が一緒にゴルフやって、酒を酌み交わすのですが、このイベントの訴求力が抜群なのです。
常見 ということは、コンペ後もうまく囲い込むことはできているということですね。
坂口 そうです。ゴルフコンペに来たお客さんは他店に「浮気」せずに、孫も連れて来るそうです。さらにイオン内に囲碁の部屋も用意しているので、それ目当てで来店してもらえるようです。
常見 囲碁の部屋ですか!?
坂口 「とりあえず来店してもらう」ことがポイントですね。例えばあるおじさんが、買物するつもりはなく何となく来店して、おじさん同士で囲碁をする。そうすると「手ぶらで帰るのは気が引けるから」と思って、たばことジュースを買っていくわけです。このように「オフラインの店舗に実際に足を運んでもらう」仕組み作りで、かなりの収益を上げているようです。
常見 イオンは時代に合わせて着実に進化していますね。ドリカム(Dreams Come True)がイオンでライブを開いて、DAPUMPがイオンモールを巡る全国ツアーをしたことがニュースになっていましたが「まずオフラインに人を集める」という意味では理にかなっているのでしょう。
囲碁の部屋の設置も納得です。私は下町に住んでいて近所に220円でトレーニングできる場所によく行くのですが、確かにそこは「高齢者の集会所」と化しています。まさにどこもかしこも高齢者が集まれる余地があれば、集会所化するという意味では「町内会化する社会」ですな(笑)。
その高齢者の心理を、企業側がうまく消費に結びつけていっている例が、岩手のイオンスーパーセンター陸前高田店の取り組みだと思います。
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