現在、欧州内の他の国々同様、英国民は公共サービスが不十分であり、かつつねに削減が進んでいるにもかかわらず、なお税負担が高すぎると感じており、過去5年間所得が減り続けていることに怒りを覚えている。その結果、多くの人々が生活保護受給者を疎ましく思い、求人の倍率が上がることを恐れているのだ。
他の欧州国と英国との大きな違いは、経済が急速に成長している(英国はEU最高の年3%超)にもかかわらず、UKIPが有権者の支持を伸ばしていることである。英国経済が今後も力強い動きを見せ実質所得が増加することを、キャメロン首相は来年5月までに有権者に納得させなければならない。
移民問題にこだわり続ければ、英国がEUに残留すべきかどうかを議論の中心にするリスクを冒すことになる。2017年にキャメロン氏がまだ首相の座にいれば、EU加盟国としての英国の地位の「再交渉」などを経て、残留の是非を問う国民投票を行うと約束したのは彼である。今の彼は、移民問題がその試金石になると言わんばかりだ。
これは由々しき事態である。EU加盟の各国政府が、欧州統合の基本文書である1957年のローマ条約に明記されている「人の自由な移動」について譲歩できる内容など、ごく限られる。
EU外からの移住者のほうが多い
英国が受け入れている移住者数は、EU加盟国よりEU外からのほうが多い。また、ポーランドやイタリア、フランスからの移住者は、ソマリアやシリア、インドからの移住者よりも、最終的に母国に戻る可能性がかなり高い。
実は、はるかに重要な問題がある。ユーロを導入していない英国の、EU内での今後の地位である。欧州統一市場に影響を与える規制に関するものも含め、英国はEUの意思決定において大きなハンデを負うリスクがある。
ユーロを導入しているEU加盟国とそうでない加盟国の関係を整理することは、新しい条約を結ばずとも比較的短時間で行える。
それができれば、キャメロン首相とオズボーン財務相は、英国民に一挙両得をもたらした、と主張できるだろう。停滞するユーロ導入国よりもずっと速い経済成長、そしてEU加盟国のさまざまな利点をだ。移民の福祉権に関する細かい改正よりインパクトは強いはずだ。
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