小泉改革後の有権者に福田政権はどう映るか


 選挙で勝利や敗北の経験を繰り返すことで、政党は国民のニーズに敏感に対応できるようになる。それは、一党支配の民主主義と決別したスウェーデンやデンマークで実際に起こっていることである。

小泉改革は最終的に自民党を破壊した

 一時は小泉元首相が”歴史の法則”を書き換えたように思えた。「日本を変えるために自民党を変える」というスローガンの下に小泉元首相は、自民党が政権を永続的に保持できる政党に作り替えると同時に、新しい時代に合うように政策を変えた。2005年の衆院選挙で小泉元首相は改革反対派の自民党議員を追放し、彼らの選挙区に”刺客”を放つという前例のない挙に出た。
 
 しかし、現在、小泉改革の何が残っているのであろうか。小泉元首相はビジョンを持っていたが、福田首相は官僚が支配する伝統的な組織に最も適応した人物である。改革路線からの全面撤退を承認するかのように、自民党は次の衆院選挙で”小泉チルドレン”を公認から外し、復党した”郵貯反乱派”の議員を公認しようしている。
 
 福田首相はいまだ成果らしい成果を上げておらず、歴史に”ミスター・イナーシャ(惰性の人)”として名を残すだろう。福田首相が官僚的な個性を超えることができないのには理由がある。それは、日本が必要とする政策を採用したら、自民党の伝統的な支配が崩壊するからである。自民党は政策を変えなければならないが、自らを破壊することなしに変更はできないのである。
 
 小泉元首相が”遺産”を残せない理由がもう一つある。それは、近年は基本的に短期政権が続いているということだ。彼が01年に首相に就任する以前、すなわち1987年から 14年の間に10名の首相が誕生した。そして小泉後も短期政権の時代に戻ってしまうかもしれない。
 
 こうした問題があるにもかかわらず、小泉元首相は本質的な意味で改革的であった。彼は、国民が政府への期待値を引き上げた。小泉時代以前なら、国民は国民のニーズに対する安倍前首相や福田首相の鈍感さを渋々ながら従順に受け入れていたかもしれない。だが小泉時代以後は、有権者の忍耐力ははるかに弱くなっている。その結果、昨年の7月の参院選挙での自民党の壊滅的な敗北と福田首相の支持率の急落が起こったのである。小泉元首相は、結局、古い自民党を破壊したのである。
 
リチャード・カッツ
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。

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