ブラジルのサッカー選手は、世界のカネの流れに敏感に反応して動く遊牧民のようである。
彼らには遊牧民となる必然性があった。ブラジルのクラブの経営は脆弱で、選手の給料は安いうえに、期日どおりに払われない。そのため、能力ある選手は、国境を越えて国外に飛び出していた。
日本もかつては、彼らのあこがれの地だった。高給で、支払いの約束は必ず守られる――ブラジルのクラブでは考えられないことだった。
遊牧民の動きは、W杯を見るとよくわかる。
4年に1度行われるW杯は、世界一を決めると同時に、選手の見本市でもある。W杯で活躍すれば、世界中に自分の価値を示すことができる。
1994年W杯アメリカ大会でブラジル代表は優勝。このときのメンバーのうち、日本でプレーしていた、あるいは大会後にプレーした選手は、キャプテンのドゥンガをはじめジョルジーニョ、レオナルドなど登録メンバーのうち、6人にも上る。93年に始まったJリーグは、高年俸を支払い、世界最高クラスの選手を集めていたのだ。
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