歴史的な全面ドル安が進行している。これはドル暴落の予兆か、それとも米国の政策的思惑か──。世界の投資家がドル離れを演じる中で、日本円は、ただドル安にカップリング(同調)する構造が続く。
親米国が多い、中東オイルマネーによる「ドル離れ」が静かに進行中だ――。
今年5月、湾岸産油国の中でクウェートが、自国通貨のドルペッグ(連動)をやめ、主要通貨のバスケット連動に切り替えた。また、政府系のSWF(国富ファンド)ともいえるカタール投資庁も、約500億ドルの総資産に占めるドル建て比率を2年前の99%から40%に大幅圧縮。ユーロ建て40%、英国ポンドなどその他通貨建てで20%を組み入れた。
そして今、最大の親米派サウジアラビアの動向が注目される。同国の政府要人は、ドルペッグ変更について「公的な政策はすべて同じ状況にある」と、従来姿勢を崩していない。だが、原油高とともに未曾有のドル安圧力が国内にインフレを加速させ、投機のタネをまき散らす懸念に、眉をひそめている。ドルの減価が湾岸産油諸国と米国との距離を、微妙に変化させているようだ。
米ドルは36年間、政策的に延命された
「今のドル安は歴史的な最安値水準。すでに米ドルは暴落していると言ってよいレベルに達している」。野村証券金融経済研究所の植野大作シニアエコノミストは、こう指摘する。現状の“ドル暴落”水準を端的に示すのが、下図表の対カナダドルに対する米ドル安のグラフ。実に51年ぶりのドル安水準にある。豪ドルに対しても米ドルは23年ぶり、英ポンドに対しては26年ぶり、ユーロに対してはユーロ誕生以来の歴史的な最安値圏が続く。
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