再エネ接続問題「経産省は古い発想を捨てよ」 飯田哲也氏に日本の政策の問題点を聞く 

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日本は先進国だから自分でできると高をくくっているかもしれないが、実は日本は後進国で、十分にできていない。もっとプログレッシブ(進歩的)な政策を取り入れていくべきだ。出力抑制にしても、現状の「30日以内」などと日数単位ではなく、時間単位でやる。電力会社の接続義務は決まっているのだから、きちんと実体化されるように施行令の見直しも必要だ。

また、FITの法律(2011年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」)には接続義務は書かれているが、「優先給電」については書き込まれていない。いまだに原子力が優先されている。ドイツもスペインもフランスも、再エネの出力変動に応じて原子力を変動させている。原子力は止めない限りは出力を変動できる。日本では、"政治の空気"によってに封印されているが、技術的には可能だ。これはしっかり再検討すべきだろう。

東電管内でも起きている「ローカルネック」の問題については、送電線の費用原則を見直すことが必要だ。送電線にかかる費用は、発送電分離後も総括原価方式によって電気料金で負担される。再エネにも同じ原則を適用すべきだ。今は原因者負担で、再エネ事業者が払っているが、総括原価方式の中でユーザー全体の負担にすべき。これは法律改正なしにできる。

この見直しなしに発送電分離しても、今の状況は変わらない。

――将来的に再エネを最大限どこまで入れていくべきか。その際に、国民負担の抑制とどう両立していくべきか。

まず量的に言えば、可能な限り導入すべきだ。究極の理想は(全需要量の)100%。資源を持たない日本は、自然エネルギー100%を目指すべきだ。数年前までは夢物語だったが、今ではかなりリアリティが出てきている。海外では、風力発電の価格が石炭火力発電の価格を下回っている国も多い。太陽光発電でも、電気料金を下回っている国もある。コストはどんどん低下しており、量的にも爆発的に拡大している。

ドイツは2050年に再エネ比率80%、デンマークは100%を目指している。途中のマイルストーンとして2030年に21%以上(現在の日本政府の目標)というのもいいが、どこまで増やすべきかという観点では100%以外にない。

ドイツでは来年度から賦課金が低下へ

では、コストの問題はどうかというと、風力、太陽光など分散型エネルギーの特徴は、技術や性能の向上に従いコストが低減する技術学習効果が機能することで、それがまさに現実化している。太陽光でいうと、数年前はキロワット当たり(の導入コストが)80万~100万円だったのが、今では20万~30万円程度まで下がっている。1キロワット時当たり40円とか36円とかに固定してしまったのは失敗で、今後のコスト低下を織り込んでいくことが重要だ。

ドイツでは来年度の家庭の賦課金の負担がFIT導入以来、初めて下落に転じる。再エネのコストは無限に上がるのではない。普及につれて段階的に上がっていくが、10~20年後には追加負担なしで普及が進むようになり、賦課金総額はピークアウトする。事故が起こるとどこまで将来コストが膨らむかがわからない原発とはそこが違う。

また、今はたまたま原油価格が下がっているが、ピークオイル論のリスクがあり、どこでハネ上がるかわからない化石燃料と比べた時に、将来的に山を形成したあとに下がっていく再エネの費用は、将来世代に対する”貯金”ともいえる。もちろん、破局的に高い負担はできないが、今の設備認定分がすべて導入されたとしてもキロワット時当たり3円程度にすぎず、東電の原発事故でシワ寄せされた今の電気料金の上がり方と比べても、決して破局的とはいえない。

しかも、再エネはすべて国内投資なので、GDP(国内総生産)にプラスに働く。国民が電気料金で負担しても、資金は国内に回る。原油価格に払うカネはGDPにはストレートにマイナスに働くわけで、資金の意味合いがまったく違うことを認識する必要がある。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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