(産業天気図・通信業)携帯電話の成長率は大幅に鈍化、総合的には横ばい

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2004年度の通信業界は、引き続きほぼゼロ成長となる見込みだ。携帯電話およびブロードバンド通信は伸びるが、固定音声電話や専用線などいわゆるレガシー部門は減少が止まらない。総合的にはほぼ横ばいということになりそうだ。
 主力部門の携帯電話は、成長率は大幅に鈍化。累計加入台数前年同期比で、2003年度は7.75%の伸びだったが、2004年度は5.5%程度となりそうだ。人口普及率の頭打ちによって単月の加入者当たり利用料金もほぼ底打ちになるものの、反転上昇は見込めそうにない。営業収益ベースで3−4%の伸びにとどまりそうだ。
 固定通信部門は、市内部門はダイヤルアップインターネットのADSLへの移行がほぼ一巡し、堅調だが、長距離・データ通信は携帯電話、IP電話の普及で引き続き大幅な減少が見込まれる。法人向けの専用線、フレームリレーなども大幅に縮小する。一方、ADSLはまだ堅調に加入者が増加、FTTHも徐々に立ち上がっている。法人向けはIP−VPNや広域イーサなどの需要は急拡大している。もっとも、固定通信分野は個人向け、法人向けとも需要代替的でトータルでは減少が続く見込みだ。
 個別企業の動向を見ると、好調なのは、KDDIだ。主力のau携帯電話が、新企画特の増加に加え、解約率低下が大いに寄与している。累計稼働台数の増加で営業収益は好調だ。第3世代携帯電話の投資も一巡しており、利益は大幅に増加する見込みだ。固定通信は厳しいが十分補う水準だ。
 NTTも好調。成長力は鈍化するがNTTドコモが堅調な利益を計上する。固定通信部門も、大幅な人員配置転換や電話部門の新規投資中止により、利益管理が可能な状態になっている。収益動向を見つつ、光ファイバなどブロードバンドの投資・営業を進める模様だ。収益源のドコモは成長はしないが投資が一巡し、高水準の利益を確保する。
 ボーダフォンホールディングスは厳しい。加入者が伸び悩んでいるうえに、加入者当たりの収入も漸減傾向。販売費や第3世代携帯電話の立ち上げ負担も重い。継続事業の携帯電話事業ベースで、営業利益は減益の公算がたかい。ただ、固定通信部門の売却による一時損失がなくなるため、最終利益は黒字に転換する。
【丸山尚文記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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