ムーディーズ、日本国債A1に格下げの理由 G7でイタリアに次いで低い格付けに

拡大
縮小

――日本銀行の10月31日の追加緩和はどう見ているか

信用力にはポジティブと見ている。企業の設備投資の抑制の大きな理由は、デフレだと考えているからだ。ただし、金融緩和による景気刺激策は一時的だという見方は変えていない。余りにも金融緩和が長く続いていることによって経済にマイナスの影響を与えるということも考えなくてはならない。米国が金融緩和策の縮減に踏み切り、出口に向かっているのはそのためだ。重要なのは成長のための構造改革、サプライサイドの政策だ。

――期待成長率が低いので、期待インフレ率を上げることも難しいのではないか。

黒田東彦総裁もそう言っているし、デフレの脱却は非常に難しいと思う。今後を見届けたい。

財政健全化へ向け新たに作成される計画を注視

――消費再増税を先送りした分、中期財政目標達成の時期をこれまで通りとするには、何らかの追加的なコミットメントがないと評価できないと思われるが。

2016年度の予算では税収増の不足分を何らかの補てんをしなければならない。15年度も一部不足が発生することになる。時間の経過とともに、埋め合わせしなければならない額は大きくなる。政府が15年夏に作成するとしている財政健全化へ向けた計画を見極めなければならない。信用力の判断上重要なアナウンスだ。それまでの間に、何らかのショックがある可能性は見ていない。

――先進国中で相対的に低い格付けとなっているが。

小泉改革以来、日本の金融システムが強化され、健全であるということはイタリアとの大きな違いだ。ソブリン(政府債務信認)危機は銀行システムの危機に端を発することが多い。また、日本の場合は国内投資家が国債に強固な資金基盤を提供していることもA1格付けを支えている。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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