昔の人を例にとって笑われそうですが、昔から多くの母親は、夫婦関係は破たんしても子供は手放しませんでした。子供と離れなければならない離婚なら、ならぬ堪忍をしてでも離婚を思いとどまり、自分の手で子供を守り育てたものです。
良い結婚生活をした人から見れば、これも打算的だと映るかもしれませんが、私はそれよりも、子供を設けたからには親がその子を育てる責任は、何よりも優先されるべきだと考えています。離婚するなら母親が子供を連れていく覚悟でするべきだと思うのです(それすら許さない事情があることも承知の上ですので、当てはまらない方は許してください)。
身勝手な人の性分は、なかなか直らない
私の知人で、たいへんな貧困時代に4人の幼子を置いて家出した美香さん(仮名)がいます。美香さんの姑にあたる70代のおばあさんが、貧しい中で息子と孫の世話をしました。その家は10年ほど後に商売があたり、みるみる豊かになりました。
どのようないきさつだったか知りませんが、子供たちの実母である美香さんが、その家に戻りました。美香さんは、貧しい中で自分の子供たちを育ててくれた姑さんに感謝するどころか、「帰ってきてあげた」という態度で、お年寄りに対する礼儀さえみせません。
夫や子供たちに対する態度は言わずもがなです。子供たちは母親が毎日の売り上げ金を数える姿が、たまらなく浅ましく見えて嫌いだと口を揃えます。「自分たちを捨てて行った人」という思いがぬぐえず、「あのおカネを数えるために帰ってきた人で、いつまたいなくなるかわからない、信用できない人」だというのです。
子供たちは当初、美香さんが身勝手だった自分の家出行為を多いに反省し、人間的に成長して母親らしくなって帰ってきたと思ったそうです。そんな常識のある人なら、その前に貧困家庭に子供を残して去るようなことはありえないのにと、私は思ったものです。
もう1軒の英子さん(仮名)の事例では、夫の、妻に対する激しい憎悪という、他人には計り知れない理由で夫婦喧嘩が絶えず、外見上は妻側にはほとんど責任がないのに、妻を追い出した夫婦別居です。
英子さんの事例では2人の姉弟が中学生時代の別居でしたが、母親の不在に対する不安よりも、父親が平穏になったことに安堵した子供たちも、自然にその形を受け入れたそうです。
追い出された妻である英子さんは気も狂わんばかりで、戻りたいと哀願したり、家の前で焼身自殺をすると暴れたりしましたが、夫に取り合ってもらえませんでした。まったく世の中には、理不尽な別居があるものだと、私たちも彼女に同情しました。
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