就活の早期化に“待った” 波紋が広がる商社提言

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 では、貿易会の提言は産業界からの賛同を得られるか。

日本経団連の川本裕康・常務理事は「経団連としても学業尊重は当然と考えているが、就活期間を短縮化させると、学生が説明会などを通じて企業への理解を深める時間が少なくなる。そのバランスにも配慮することが重要だ」と言う。

採用選考が8月になれば、卒業までの時間的な制約から、学生が受けられる企業数が減る可能性もある。また、経団連加盟企業の採用環境は業界ごとにさまざまで、すんなり賛成とは行きそうもない。

「黙っていても優秀な学生が集まる総合商社だから言えること」。他業界の人事担当者からは、こんな皮肉の声も聞かれる。

一方、商社側も後ろ倒しを決めたわけではない。「今回の話はあくまで、産業界全体で時期を見直しませんか、という提言。商社だけ後ろ倒しすれば、学生の就活期間を逆に長期化させてしまうし、他業界の内定者を獲ることになって批判を浴びる。産業界全体が無理なら、時期を変えるつもりはない」(総合商社の採用担当者)と断言する。着地点はまだ見えない。

(渡辺清治 撮影:ヒダキトモコ =週刊東洋経済2010年11月27日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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