西側諸国の団結なければグローバル化は破局する 世界は2つないし3つの巨大貿易圏に分裂の恐れ

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グローバル化の第2幕は急速に勢いを失いつつあり、早急かつ決定的に何らかの行動を起こさなければ、ウクライナ情勢のいかんに関わらず世界は敵対する陣営に分裂するだろう。バイデン大統領はこれまでのところ、民主主義諸国の同盟を結合する経済的な絆を提供せずにきた。特に自由貿易協定が挙げられる。バイデン氏は同盟諸国間の経済的相互依存の拡大が戦略地政学的に必須である点を認識しなければならない。欧州諸国に包括的な自由貿易協定の締結を提案するとともに、トランプ前政権時代に離脱した環太平洋連携協定(TPP)にあらためて加わるべきだ。

「新世界秩序」構築に代わるものは世界の分裂

バイデン大統領はまず、同士国の間での経済的統合を深める一方、専制国家に対しても、そうした国々が柔軟性を高めるのであれば門戸を開いておくべきだろう。経済的な自由の拡大は世界および米国の繁栄にとって最善の保証であり続ける。

このような「新世界秩序」を構築するのは多くの時間と労力を要する仕事だ。だが、それに取って代わるものは1930年代に広がったような、敵対的な経済・政治ブロックへの世界的分裂に他ならない。バイデン大統領やジョンソン英首相、ドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領らは歴史が彼らをどう審判するか真剣に考えるべきだ。

それは世界が分断され、怪物のような独裁者が権力を握るのを座視した第1次世界大戦後の政治家らになぞらえたいのか、それとも一段と安定し相互の結びつきを強めた世界を築いた第2次世界大戦後の指導者と肩を並べたいかの問いだ。

国際通貨基金(IMF)や世界銀行の創設、ドルを基軸通貨とする固定相場制づくりを話し合ったブレトンウッズ会議から2年足らずのうちにケインズは死去した。しかし、彼が多大な貢献をして築かれた世界はその後も生き続けた。世界の指導者らがこの機に臨んで何かもっと良いものを生み出さなければ、キエフの街頭でそれは死に絶えてしまうものであり、そうであってはならない。

ジョン・メイナード・ケインズ(中央。1944年7月、米ニューハンプシャー州ブレトンウッズ)Photographer: Hulton Archive/Getty Images

(ジョン・ミクルスウェイトはブルームバーグ・ニュース編集主幹、コラムを共同執筆したエイドリアン・ウールドリッジはブルームバーグ・オピニオンのグローバル・ビジネス・コラムニストです。コラムの内容は必ずしも編集部あるいはブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:

The West Must Save Globalization: Micklethwait & Wooldridge(抜粋)

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著者:John Micklethwait、Adrian Wooldridge

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