大阪新駅、工事中に「駅名標」設置した納得の理由 「イノベーションの実験場」として2023年春開業

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ホームには特筆すべきものがもう1つあった。「世界初方式」のホームドアである。

このホームドアは天井から床まで覆うタイプで、ゆりかもめや東京メトロ南北線などで導入済みの「フルスクリーン型」と呼ばれるものだ。フルスクリーン型自体は珍しくないが、すごいのは、ドア位置が異なるさまざまな車種に応じて、扉の開く位置を変えることができるという点だ。

可変型のホームドアはすでに実現しているが、フルクリーン型で可変型を採用するのは世界初という。なにわ線が開業すれば、JR西日本だけでなく南海電鉄の車両も乗り入れることになる。「入線車種が多様となるから、新型ホームドアの開発に着手した」。

JR西日本のグループ会社、JR西日本テクシアとナブテスコが共同開発した。このホームドアは駆動部や配線を収納したをマシンケースを上部に設置。扉を上から吊り下げることで左右への動作を行う。「上部の強度が必要なので、後から設置するのではなく、事前に仕込んでおくことが必要だった」(JR西日本)。入線する車種や編成は2Dセンサーによるセンシングと車両に搭載したIDタグで識別する。

新駅は「イノベーションの実験場」

新駅構想は、東海道支線の連続立体交差事業と併せて2011年4月に決定した。連続立体交差事業は東海道線吹田貨物ターミナルから新大阪を経由して大阪環状線福島駅を結ぶ東海道線支線約2.4kmを地下化するというもので、大阪市が事業主体となる。地下化工事と新駅設置工事は2015年に始まった。事業費は地下化が約540億円、新駅が約150億円だ。

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3月16日には、地上部分の開発構想が発表された。駅前広場を整備するほか、地上3階の新駅ビルを建設する。2024年夏頃に駅前広場など一部を供用開始し、関西万博の開幕に併せて2025年春頃に商業施設を含め全面開業する計画だ。

この地上と地下を「イノベーションの実験場にしたい」と、JR西日本は意気込む。世界初方式のホームドアに加えて、顔認証改札やアバター案内ロボットなど、デジタル技術を活用した近未来の空間を実現したいという。

国際会議場、オフィス、都市公園、住宅などで構成されるうめきた2期全体の開業は2027年度。5年後には大阪駅の北側がさらに変貌しそうだ。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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