「学習」「科学」休刊後、名門出版社が甦った理由 積極的M&Aで「奇跡のV字回復」を実現
医療福祉分野では、学研ココファンが、元をただせば『学習』『科学』や『学研マイコーチ』などの家庭への直接販売事業から派生した新規事業ということになる。
私自身にも経験があるが、かつては毎年春になると新小学1年生の児童を持つお宅を1軒ずつ訪問して営業活動を行っていた。すると、平日は訪問したお宅の親たちが仕事で不在のことが多く、代わりに祖父母の方々とお話をすることになる。
何度かご挨拶をして親しくなると、茶飲み話をさせていただけるようになる。そこでじっくり話を聞くと「子どもの世話にならず、同じ地域で、年金で暮らしていけるような居場所がほしい」と相談されることが多々あった。
そうした経緯から、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を事業化するという発想が生まれたのである。
特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)は入りたくても倍率が高く、簡単には入居できない。また、有料老人ホームには数千万円という金額がかかるものもあり、一般の高齢者が入るにはハードルが高いという問題があった。
学研ココファンは、入りやすく、年金で暮らせるくらいの居場所がほしいというニーズに応えるための施設だった。対象となる高齢者の方たちが、かつて『学習』『科学』の顧客層でもあったことから大きな信頼を得て、それをアドバンテージとして順調に契約数を伸ばすことができた。
異端児であり続ける決意
学研は、このように社会に貢献できる事業を継続させるべく、さまざまな仕組みを構築してきた。今後も持続可能な社会に資する事業を担っていきたい。
「いいものを作り、いい人間を育て、それらを起点に新しい商品やサービスを生み出す」
私は、この原則をつねに念頭に置いて、慣習や常識にとらわれず社長業に取り組んできた。
2020年にテレビ番組『カンブリア宮殿』(テレビ東京)に出演した際、村上龍氏に「異端児」と名付けていただいたが、私のこういう姿を見てのことだったのだと思う。
今後、再び学研が危機に陥ることのないよう、社内で一丸となってこの原則をつねに意識し、業界の異端児と呼ばれるくらいの気持ちで業務に取り組んでいきたいと思う。
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