近年の日本株の株価形成を見ると、まず、株価の動きが世界株(とくにアメリカ株)に連動する傾向が顕著になった。端的に言って、日本の株式市場は世界の「ローカルマーケット」の1つになったのだ。また、円安(円高)が株高(株安)につながる傾向が加わり、内外の株式に分散投資することのメリットが減少したことが主な変更理由だ。
全世界株式1本と割り切るほうがずっとシンプルに実行できるので、実行上のメリットをあわせて考えたという理由もある。
なお、前2版の方法と今回の方法の運用としての優劣は微妙であり、甲乙はつけがたい。前2版の方法で投資してきた人は、過去の投資分を全世界株式のインデックスファンドに投資し直す必要はない。とくに、NISA、つみたてNISAを利用してきた方は、ファンドの乗り換えは節税投資枠の喪失につながるので、そのままでいい。新規の投資分だけ、全世界株式のインデックスファンドに簡略化するといい。
内外の株式の比率を状況に応じて計算し直し、場合によってはREIT(不動産投資信託)などを付け加えると、リスクとリターンの特性を改善したポートフォリオを作ることができると筆者は考えるが、差は小さい。一般投資家には運用が複雑になることのデメリットが大きいだろう。
本当に「ほったらかし」でも大丈夫?
ところで、リスク資産の投資内容をどうするかにかかわらず、リスク資産への投資は、状況を判断しての「売り」も「買い」もしない「ほったらかし」でいいのだろうか。
とくに、前記の「4つのリスク」のような要因について考え始めると、リスクイベントの前にリスク資産への投資を減らすような調節をしたい思いに駆られる投資家が少なくないだろう。
リスクについてあれこれ論じてから述べるのは恐縮なのだが、これらのリスクについては、「おおむね」市場参加者の知るところであり、かなりの程度株価に織り込まれていて、しかも、その織り込み具合が「足りないのか」、「過剰なのか」は判然としない。
一方、株式市場では、さまざまな要因を考慮し予想したうえで、株式のリスク負担に見合うリターンが期待できる株価を形成しようとしている「はず」だ。
結局、いつ投資をすると有利だといったことが言えるわけではないので、市場の株価形成が大まかには合理的に行われていることに期待して、自分にとって適切な大きさのリスクを抱えて、投資は「ほったらかし」にしているのでいいという結論になる。明確に改善できると考えられる理由がないのなら、「動く」ことは余計だ。
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