もちろん、戦争なので、不測の事態の発生はありうる。だが、上記の諸条件を「連立不等式」のように眺めると、「ウクライナが安全保障と引き換えにNATOに加盟しないことを約束して、中立国化する」というあたりに落としどころが見えているのではないだろうか。とくに、ここ数日の原油や金の相場などを見ていると、そう思う。
第3のリスクは、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が金融を引き締めすぎる「パウエルリスク」だ。FRBは3月16日に政策金利の誘導目標を0.25%引き上げることを決め、その後にも誘導目標を引き上げる方向であることを示唆した。
だが、一部に予想された「0.5%幅の引き上げ」は回避し、今のところ概ね市場関係者の予想通りと言ってよく、16日にはアメリカの株価はNYダウで500ドル以上の上昇を見せた。
経験的には、利上げ過程のどこかの段階で株価は大きな調整に転じるが、今のところは、むしろ「安心感」を醸し出すことに成功している。
第4の「岸田リスク」は、岸田政権がアベノミクスの金融緩和政策を修正しようとするリスクだが、このリスクのみ、状況がやや悪化したかもしれない。先般公表された日銀政策委員2名の交代人事は、いわゆる「リフレ派」が1名減となるものだった。本格的な方針転換が見えるのは、来春の日銀の正副総裁人事が話題に上る時期(今年の年末から来年初)だろうが、方向性は不気味だと申し上げておこう。
4つのリスクを総合的に評価すると、ロシアのウクライナ侵攻が始まったときよりもマーケットのリスク状況は改善しているように見える。
投資は「ほったらかし」でいいのか?
さて、私事で恐縮ながら、筆者は先般、水瀬ケンイチ氏との共著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』(朝日新書)を上梓した。2010年にオリジナル版を出し、2015年に「全面改訂版」を出した書籍の第3版で、全面的に書き替えた。
いずれも、リスク資産にあってはインデックスファンドへの投資と、無リスク資産では個人向け国債変動金利型10年満期での運用を勧める内容だが、過去の2版では、リスク資産への投資を国内株式(TOPIX連動)と外国株式(MSCI先進国株式連動)のインデックスファンドに均等に分散投資する内容だった。
だが、今回の版では全世界株式(含む日本株)に連動するインデックスファンド1本にリスク資産投資を絞った。
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